こんな作業もします
他の工房がしない作業ここでは、八王子市 南大沢の都立大学(現 首都大学東京)正門横にあるシンボルタワー「光の塔」のために作った日時計とオルガン付き振子時計の設計制作について記します。
上下合成写真
自動オルガン付き振子時計
旧都立大、現首都大学東京 入り口すぐにある光の塔シンボルタワー内。
1991年完成。発案・工作・取付:須藤オルガン工房
デザイン:高橋 英子
時計・オルガン部製作:ドイツNaeschke工房日時計と対をなす 大地の力によって駆動され等時運動をする振子を使った時計を提案した。
収容曲: Josef Haydn
Andante 4
Menuett 5
Allegretto 7
Allegro modelato 9
Menuett 11
Presto 12
残念ながら 1997年3月の定期保守作業以来保守を行えない状態が続き 長らく故障休止していた。
機械時計やオルガンに知識のない業者が保守を行っていた模様である。
埃すら払われないまま、みすぼらしい姿をさらしている。先日調査の依頼を受けて行ったところ
1ヶ月程度を要する大規模保守作業が必要な状態になっていた。
完成後20年近い年月が経過し、さらに十年近く埃すら払っていないのであるから当然ではある。 2008年3月記
大規模保守作業(2009年12月〜10年1月末)首都大学から大修理の予算が付いたとのこと。
足場の準備が整った後、2009年12月12日に時計本体を壁面から取り外して工房へ持ち帰った。埃を払い、時計部メカニズム、文字盤、自動オルガンメカニズム、自動オルガン本体、巻き上げ装置をそれぞれ取り外してオーバーホールに入る。
20年の間に積ったり付着した埃は場所によってはフェルト状になっていた。
文字盤は木部を研磨・清拭するだけでなく、文字の金箔を新たに押したり、象嵌のはがれを修正したりなどを行った。
持ち帰った時計部分、綿ぼこりが付着して見るに堪えない姿。
分解して油に漬けて洗った。
差動巻き上げ装置の傘歯歯車の部分だけはカシメてあったために分解できなかったが、他は全て分解できた。軸受けの摩耗などを計測したが、幸いブッシュを作りなおすほどの摩耗は見受けられなかった。
Anker(日本では何というのか、脱進器の歯車ではない側)に多少の摩耗があったので研磨整形した。
左写真 清掃などを終わり組み立て最後の段階。
前枠を取付ける直前の状態。周囲の物がうるさく写っているが、全体に見違えるように奇麗になっている。
この時計は現地で取付けてしまうと非常に注油が難しい部分がある。 狭い所に注油するための注油器も作った。
時計の進すみ遅れを点検するために振子の周期を計る仕掛けを設けている。
ルビジウム原器を元に 振子4タクト8秒の周期を計測する。
完成時に10回測定し、平均値を取ったところ、日差14.8秒の遅れであった。 外気に触れる振子時計としては充分な値と言えるであろう。万一の場合にも落下することがないように、振子の背面にワイヤーを通した。 振子の動きを阻害することはないようにしている。
振子や重りの直下には人が入ることがないように柵を設けた。画像は撮った後追加しましょう。
柵には 「光の塔 時計群について」という表題で説明板を設けた。
自動オルガン部オルゴールと同じようにドラムにピンが刺さっている。上にあるのは【独】Klaveと呼ばれる鍵盤に相当する部分。
Klaveの爪に極少量の油をやらないと長い間にピンが引きづり出されてしまう。
一部ピンが抜け出ているのが見える。 一部のピンは欠損していた。
点検・修正作業を行っている。欠けているピンは製作して打ち込んだ。
自動オルガンメカニズム部分やオルガン本体(特に吹子の貼り替え・補強)の修理の後 実際に鳴らして楽譜と照合して音が欠けていないかを点検。
1音余計な音があったが、ちょっとヒョウキンで面白いのでそのまま残すこととした。 おそらく、Naeschke氏の冗談なのであろう。時計の
京王電鉄相模原線 南大沢駅
首都大学東京 正門横の光の塔へお越しください。 毎正時ハイドンの自動オルガンのための曲が流れます。Mai. 2010
写真提供: 下田 直宣
アナレンマ(光の塔内部床面)
光の塔内部の床にはこの窓(二つの日時計の間にある)から日本標準時の正午に差し込む太陽の光が床に1年かかって描く位置がプロットしてある。 アナレンマと呼ばれる8の字型を描く。
地球が楕円軌道と描いて太陽の周りを公転することと、地軸が傾いているために生じる現象である。Wikipedia アナレンマ
(英語、独語のページの方が充実している)太陽の南中時間は日々異なる、すなわち均時差がある。 それを均したのが、平均太陽時である。
光の塔内のアナレンマは 日本標準時正午の太陽の位置を投影している。
この壁は光路を遮らないように作ってある。
しかし、残念ながら夏至には ・ ・ ・
下の説明をご覧下さい。写真提供: 下田 直宣
アナレンマ(続き)
床面を3階から見たところ。 床にプロットされたアナレンマが見える。
冬至には光の塔の床を外れて左の階段下の床にまで光は伸びる。 階段下に冬至の表示が埋め込まれているが、ここからは見えない。
左上から右下へ斜めに多少石材の色が濃い部分がある。 春分・秋分の日には太陽の光はこの線上を移動してゆく
完成後最初の冬至には所用があり、自分で確認は出来なかったのだが、当時の学長さんはわざわざ光の塔内のアナレンマでその正確さを確認して下さった。 最も誤差が起きやすい冬至に確認して頂けたことでホッとした記憶がある。
写真提供: 下田 直宣
アナレンマ(続き)
この写真で6月と7月の表示は良く読み取れる。
右の夏至の表示は読み取りにくいがその位置は床にプロットしてある。 残念ながら壁の厚みに遮られて光はそこに落ちない。 計算上ここに光が落ちるはず ということである。以下の日時計とともに
発案:日本設計
デザイン:高橋 英子
設計:須藤オルガン工房
金属工作:ネルサ工房Maerz 08
設計している頃、間違いがあってはいけないと思い詰め、度々夜中に目覚めて眠れぬ夜を過ごした。 模型を作ったり、自宅のバルコニーに小さな日時計を作って確認していた。
計算にはSharp のポケットコンピューターを使用。設置の時には不運にも私は入院する羽目に陥り、現場に居ることが出来なかった。 方位の取りかた、基準点の取りかたGnomon(影を投影する棒)の角度の取りかたなどを記したメモを作って作業を依頼する他に術は無かった。 良い作業をして頂き結果は良好であった。
日時計
旧都立大、現首都大学東京入り口すぐにある光の塔シンボルタワー外壁。
1991年に完成。大地が太陽を廻る動きと自転を感じ、季節の移ろいを感じる時計として製作。
八王子市南大沢時間で表示する。
標準時とはおよそ 19分+均時差 のずれがある。両日時計の間に縦長の黒い部分がある。ここには直径300mmの窓がある。
外壁の日時計にも標準時正午のアナレンマが記してある。
もっときれいな写真はこちらhttp://homepage2.nifty.com/minam/031103hidokei.htm
日時計に彫られた太陽の様子が良く見えている。http://minam.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_34af.html
同じ方のBlog、前記の記事の修正など。Maerz 08
再びこのような楽しい仕事をする機会が訪れることを期待したい。
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Angefangen Okt.2005