こんな作業もします
他の工房がしない作業の実績
パイプ修復
パイプの損傷の修理、金属パイプは錫鉛合金製のため柔らかく、自重でつぶれることもある。外力で変形することも多々ある。
その状況により、作業方法は異なるが、多くの場合にはほぼ完全に修復することが可能である。
あるホールのオルガン修理 記 では大きなパイプの損傷を修復した記録をご覧いただけます。地震対策
自分のオルガンにも対策が足りなかったと思う部分は機会を見つけては処置をしている。
いろいろなオルガンを観察していると、恐ろしいほど地震対策がなされていない例がある。
自分の苦い経験を元に行っている対策をご覧ください。
オルガンと地震 では当工房のオルガンが芸予地震で被害を受けたことを契機に、色々な対策方法を紹介している。オルガンの調査
オルガンの状態、価値、修理方法、存廃の判断、など御事情に応じた調査を行う。
断定的な結果を出すのではなく、考え得る全ての選択肢について検討し、比較をする。
端的な表現で、画像を交えた緻密・正確 包み隠すところの無い報告書を作成するように努力している。 ここで実例をお見せすることはできないが、すでに幾つかの調査を依頼され、報告書を作成し、依頼者からは信任を得たと感じている。オルガン改造
どんなオルガンであってもそれを所有する教会・施設 にとってはかけがえのない宝でしょう。 その宝をより良くできる場合もあります。
その例は
ある教会のオルガン改造 北浦和カトリック教会のオルガン改造
ある Boschオルガン 移設・改造記 をご覧ください。時には費用 対 効果 のバランスが取れず、改造をお薦めできなかったこともある。決してむやみに改造をお薦めするものではない。
日時計、振子時計のページ は別に設けました。
オルガン椅子昇降装置
世の中のオルガン製作者のほとんどはドイツのA.Laukhuffの椅子を購入してそのまま使っている。 あまりにもつまらなく感じる それに加えて仕上に分厚い塗装が施されていて厚化粧の下に木目が見えている。これでは木製ではなく合成樹脂の椅子と変わらない。
自工房で椅子を作り始めたのは20年以上も前になる。当初昇降装置は標準部品を組合せて作っていた。 強度に不安があったため、その後この方式を使い始めた。
上の画像は 座面を目いっぱい上げてメカニズムが見えるようにしている。
下の画像は椅子をさかさまに置いて下面から見たところである。中心を通る鋼材には両端にそれぞれ右ネジと左ネジが切ってある。
右に見えるのはクランクへ繋がる自在継手。
おそらく軽自動車のジャッキよりも強力であろう。
仮に、座面が落ちても指を挟むことがないように隙間が残る設計になっている。購入する方がはるかに安価に終わるのだが、自分の性格はこういうことにもこだわりたくなるのである。 経営者としては落第と言えるであろう。
Apr.2008
実験機でのプログラミングの様子。
PCでプログラミングソフトを起動してプログラム(ラダー言語)を編集している。 その結果はPLC(右手の巣のような配線の下にある)に送り、動作を確認する。
実験機の左に3つ並んでいるのは音栓つまみを動かす電磁石。 その右手前は 試し用のスイッチ類と表示器 コンビネーションの階層表示(現在32を表示)と 現在の音栓記憶表示(Aを表示)が見える。
横河ではなくOMRONを採用した理由は
横河のカタログ類の不備
28頁のみ、到底機種選定は不安でできない、
対するOMRONのカタログは電話の翌日着1618頁
説明書類の不備
有料、発注しても送ってこない、対するOMRONは電話
で質問をしただけで、説明書をダンボール箱に詰め
て送ってきた、4冊計1700頁ほど 翌日着。無料
質問に対する対応の悪さ
電話で質問しても電話に出る女性は全くの素人、折り返
し電話をくれると言うが、一回も掛かってこない、
対するOMRON 専用の電話窓口で即回答が得られる。
前記の通り、購入前に説明書を送る提案もしてくれたこれだけの違いがあればどちらを採用するか一目瞭然であろう。
コンビネーション
コンビネーションあるいはコンビナツィオンと呼ばれるオルガンの音栓記憶装置は現在では完全に電子化されている。これを機械式で製作する意味は無いと言って良いであろう。
専門メーカーの製品を購入して使用するのが一般的である。 当工房でも従来はイギリスSSLの製品を使っていた、他にはドイツLaukhuffやO.Heussの製品が使われている例が多い。
既製品を使う場合であっても、かなりの自由な指示をすることは可能である、その点では不満は無かった。しかし、それらの製品は我々には完全にブラックボックスであり、どのようにプログラムされているかは知る事もできない。故障の時には生産者に問合せるしか手立てはない。 10年もすると修理もだんだんとおぼつかなくなってくる。知りあいの電子技術者に国産のPLC(Programmable Logic Controller)を使ってプログラム作成を依頼したところ、「多忙ゆえ自分で作りなさい」と実験機(横河製)などを提供してくださった。 多少の勉強をして試みると目途が付いた。
OMRONのPLCを使うことに決定、プログラミングソフトと共に発注。シュミレーションソフトでプログラムの動作を一通り確認。その後実験機を作り動作を確認しながら修正・改良。本業をしながら、実質およそ1ヶ月で実用になる段階に至った。
購入品と比較して、プログラムの内容をこちらで確実に把握していること、故障時にPLC本体などは国内で容易に手に入ること、OMRONなどは年を経ても、旧機種の代替品を必ず指定していることは安心である。また私が居ない時にも国内の電子技術者が対応できる。
音栓数が増えた場合など、必要に応じてプログラムの変更も自由にできる。
今回も他のオルガンには無い独自の機能を追加している。宮崎県立芸術劇場のオルガンに入っているコンビネーションやリモートコンソールとの連携装置類は全て自前で作れたと思うと残念である。
機械式のコンビネーションを電子式になさりたい場合、現在のコンビネーションが修理不能になっていてお困りの場合など、お問い合わせください。
Jan.2008
後写鏡取付具
オルガンの演奏台に鏡を取付けて欲しいという希望はしばしば受ける。
市販の自動車用バックミラーを取付けている例も見かけるが、オルガンにはなじまない。結局自分で作るしかない。
当工房では木工でこのような自在継手を作り、鏡を切って切断面を研磨し取付けるようにしている。 不要な時には工具を使用せずに簡単に外すことも可能。 外した時もそれほど不細工には見えない。パイプの箔押し
北ドイツの古いオルガンでは鉛を使っていたために、正面のパイプに錫箔を押して光沢を見せていたそうである。
この例は、40年ほど前、1960年代に日本に入ったオルガン。 亜鉛製のPrincipal 16'正面パイプである。 代替材料であり、感心したものではないが、所有者にとっては40年の思い入れと重みのあるパイプである。 オルガンを新しくするに当たってこのパイプは再利用することとした。
亜鉛は研磨しても短時間で表面が黒づみ美しくなくなる。 そこで錫箔押しとすることにした。
歌口は金箔押しとして色を添えることとした。手前のパイプの歌口はまだ金箔押しをしていない、また背面の錫箔押しをしていない部分が見えている。 この作業は前を隠して後隠さずである。
Maerz.06
改造前の音栓駆動モーター群
分解修理もしたが ・ ・ ・
機械式に改造後の同じ部分
演奏メカニズムの間を縫って作った同軸メカニズム
反復機構
音栓機構の改造
電気式音栓機構を持ったオルガンの滑り弁(【英】Slider 【独】Schleife)を動かす電磁石やモーターが故障する例はかなり頻繁にある。 このオルガンではスイスのINCOSET製 滑り弁駆動モーターの故障が何回か起こった。 すでに代替品が手に入らなくなっており、さらに、修理するには一部のモーターはパイプをどけ、さらにパイプ台などを外さなければ手が届かない造りであった。1台故障しても修理に1日以上を要する。
モーター本体の作りは中々しっかりとしているのであるが、行程制御回路に問題がある。 構造や回路は完璧につかむことができていた。私が居る間は制御回路を何としてでも修理しながら使ってゆけるとは思っていた。
将来を考え、またこのオルガンにはコンビナツィオンを付ける予定も無いことから 全機械式に改造することとした。
設計時にメカニズムを通すための場所を取っていないので、設計はかなり困難であった。 困難を解決して設計を進めて行くのは面白いのではあるが、一時はこの仕事を受けたことを悔やむほどでもあった。
このような場合、現場で微調整や設計変更をすることを考慮に入れた設計をして準備をしなければならない。 そのために現場には鑞付けや鉄を曲げるためにアセチレンガスとバーナーも持って行った。
工具の頁5 にある 鉄を曲げる道具はこの作業では大活躍であった。
場所が不足するため、演奏メカニズムの間を縫ったり、送風管を一部細くして(多くのオルガンの送風管は不必要に太い)場所を作ったり多くの工夫が必要であった。 回転軸は一部同軸構造として場所をとらないようにした。 内軸と外軸がそれぞれ1つの音栓機構として働く。
結果、演奏メカニズムには一切手を加えず、影響も与えずに改造を終えることができた。
カプラを足から操作するようになっていた。これは電気を使えば容易であるが、メカニカルにこの目的に合った反復機構を作るのはそう簡単ではない。
反復機構は自分のアイディアで作り、ペダルとの連結には自転車のブレーキワイヤーを使って解決した。改造を終わってみると、オルガンから電気配線を駆逐でき、演奏者の手の力で音栓を操作する快感をこれほどに感じることに驚いた。
必要なことに遭遇し、困難であってもじっくりと考察することによって解決できるものである。
おそらく他の工房であれば二の足を踏むような作業であった。
このような作業を実施するには 技術力、考察力、工作能力と見合った設備、工房のチームワークが必要である。どれが欠けてもこのような作業を成功させることはできない。Feb.2006
修理のために分解した電磁石
かしめを外すために旋盤で削る
修理完了して試験前の仮組み状態
Laukhuff製
音栓機構電磁石の修理スライダーマグネットとも言われる。
オルガン部品供給の最大手、ドイツのLaukhuff製の電磁石は10年程で故障が発生している例が多い(1970年代の製品に多いようである)。当工房ではすでに70台ほどの修理を行っている。 おそらく他のオルガン工房では新しい電磁石に交換することであろう。 しかし、このような単純な機構の部品では故障の原因は簡単に突き止められる。 1台分解して明確に理解できた。 作りはしっかりしている。
新品に交換する費用よりも安価に修理作業ができる上、これだけ良い工作物を廃棄するには忍びない。 交換すれば合わせ作業などをしなければならない。
私の判断は当然修理をすることである。
多くの工房では故障の原因を追求することもしないであろう。 「動かなくなった」→即 「新品に交換」 ということになるであろう。
この電磁石は修理後はおそらく100年以上の使用に耐えると思う。想像できる故障は
コイルの断線
簡単に巻きなおせる。
含浸メタルの油切れ
定期的注油でかなりの年月しのぐことが可能。
分解する機会があれば含浸しなおすことが可能。Otto Heuss製の音栓駆動モーターも故障をすることがあるが、構造は至って単純。 モーター部分も制御基盤も修理可能である。
このような問題でお困りの節は、安易に交換を選ぶことなく、一度ご相談ください。
上の例のように 楽器らしい機械式 に改造する事も検討いたします。Feb.2006
手すり
オルガンの周辺にはオルガンと調和しない調度品は置きたくないと思います。
必要なものは、提案してそれなりの物を作るように奨めるようにしています。今の日本ではこのような建築金物を作るところはなくなってしまいました。また建築家の考えに金物を作って使おうという発想も無くなってしまいました。
金具は鍛造、楢の挽きもの、楢の8角棒、全て手作業による工作です。 このようなものにネジは似つかわしくないので、ネジも見せていません。
その他の工作のページにも掲出しています。
このページにある、CCDカメラ固定装置 や 照明、折りたたみ椅子 もオルガン関係に使えるものです。Feb.06
送風改良
以前は ネオバロックの遊動吹子(Schwimmerbalg シュヴィンマー吹子)を踏襲していた。 もう20年ちかく前になるが、重りで加圧する吹子が俄然音楽的であることに気付き、また蛇腹型吹子が有利であることにも気付いた。
機会が有る度に、自分の過去の楽器だけでなく、他所の楽器にも改良を重ねてきた。
左の画像は、そのような現象に気付いた頃に 送風機の直後の貯風吹子(Magazinbalg マガジン吹子)を重り加重の蛇腹型吹子に改造した例である。
この後に各風箱に吹子が有ったのであるが、これだけでもオルガンの風には変化が感じられた。 気付く人は気付いていた。
2つ目の画像は、吹子全体が写っていないので少々判りにくいかもしれない。 このオルガンは改造するに当たって、どうしても吹子を水平に設置する場所が見つからなかった。 蛇腹型吹子は本来は水平に置くものであるが、場所を取るのが欠点である。
ここでは窮余の策としてオルガン後部壁面に垂直に取り付けている。 重りの力はロープを使って吹子板に掛かるようにしている。
3番目の画像
このオルガンでは前記の例よりもさらに厳しい条件であった。 場所が無いだけではなく、他の場所から風を持ってくるために必要な導風管を通す場所も無かった。 致し方なく、旧風箱直下型遊動吹子の場所にさかさまに取り付けることで解決した。
ここでは調律の時に立つ場所の関係で楔形吹子にしている。 重りは化繊の帯を使って吊るしている。
恐ろしいことに重りがパイプの上に吊るされている状態になるので、帯が万一外れた場合にも、重りがパイプに落ちることがないよう4箇所ロープで落ち止めをしている。風の改良はオルガンの性格に多大な影響を与える。 今まで多くのオルガンで風の改良を図ってきたが全てにおいてその効果は予期した以上のものが得られた。
オルガンの風の問題も諦めずに じっくりと観察し考察してゆけば必ず解決方法が見つかるものです。
Feb.06
電気式音栓機構の改造・修理
このオルガンでは、電気式音栓操作スイッチの接点に問題が多く、故障が頻発した。 代替部品はすでに手に入らない。 音栓操作部を完全に新しくすることも考えられるが、大改造になる。
確実な接点を加えることは容易ではない(市販のスイッチ類を付加することも考えられるが、静かなものが無い)。 そこでフォトセンサーを使い 赤外線の通路を元の接点金具で遮断して回路をOn Offすることとした。 フォトセンサーだけでは接点容量として多少不足したのでトランジスタで電流増幅して 音栓を動かすマグネットの電流をまかなえるようにした。
接点は電子化されて消耗部分は無くなったので、故障の心配は非常に少なくなったと思われる。 事実改造後間もなく10年になろうとしているが、一回も故障はしていない。安易に部品交換に走ることなく、手に入る材料を効果的に適用して従来の部品を再び生かすことを考えるべきだと思っている。
Feb.06
メカニズム改良 整音改良 準備中
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Angefangen Okt.2005