その他の工作・雑学3
オルガン以外の作品類


【インバーターの利用】

工作機械など、モーターの速度を自由・無段階に操作できることは以前は夢であった。
しかし、インバーターの出現でそれは夢でなくなった。我々が実用にできる価格になり、オークションで格安の中古インバーターを手に入れることもできる。

 しかし、電源は3相 200V仕様が圧倒的に多く、単相 100Vの製品は少ない。
単相 200V入力の製品もあるが、あまり助けにはならない。
また出力は全ての製品において3相 200Vに限定されている。

  ◎ 単相 仕様のモーターをインバーターで駆動する方法
  ◎ 単相 100V仕様のモーターをインバーターで駆動する方法
  ◎ 家庭の単相 100V電源でインバーターを使う方法
    について実験を行い、一部実用にしている。
参考にして応用されるのはご自由であるが、規格外の使い方をするのであるから、しっかりと理解して、各自の責任で応用して頂きたい。

本ページの内容を確実に理解できない場合には実験することはお薦めしない。
3相交流の一部は単相であることが判らない場合にはおすすめできない。
200V以上の電圧を扱うことになるので、感電のしかたによってはかなりの危険がある。
感電について確実な理解ができない場合には実験することもおすすめできない。
100V電源をスライダック(単巻トランス)で12Vに下げて模型などに使うと感電の危険があることを説明できないのであれば、手を出さないでほしい。

一般的に使われるインバーター 出力は

パルス幅変調(PWM)によって擬似的に正弦波を作っている。出力200Vと称していても尖頭電圧は280V程度と思われる。基底電圧を低くしても実効値を低くしているだけで尖頭値は高いことに留意しなければならない。
多くの場合、負荷は誘導性であるから、パルスとの過渡的反応の影響も想定しなければならない。
また交流の公称値は二乗平均値であって尖頭値は√2倍であることも忘れてはいけない。

コンデンサーモーターをインバーターで駆動する

直交する2組の一次巻線とかご型回転子で構成される単相モーター。多くの場合3本の電線が出ている。4本の場合もある。
コンデンサーでおよそ90度移相した電流を1次巻線の1組に供給することにより回転磁界を得ている。

 画像1
画像は単相 100V40Wのターボ送風機に取り付けた小型インバーター。実用にしている。
モーター付属の進相コンデンサーは使用せずに3本の線にインバーター出力の3相交流を加えている。したがって、モーターにはゆがんだ回転磁界が生じているので発熱は多くなるようである。
送風機を駆動しているので、この例では送風の一部をモーター内部に送り強制的に冷却している。

60あるいは50Hzを基底周波数とするのが本来である。この送風機では送風出力を短時間大きくしたい場合が(無理をして送風圧力を保ったまま、送風量を得たいため)あるので、80Hzを基底周波数 133Vを基底電圧としている。通常60Hzで使用しているので、この場合F/V特性によって100Vでの使用となる。
80Hzで使用する時には133Vで力強く回ってくれる。当然短時間に限って使用している。
強制空冷なし80Hz30分連続運転でモーターケースにて38℃、コイル表面にて70℃ほどに温度上昇。60Hzではコイル表面にて35℃ほどであった。強制空冷を行っていれば60Hzでの運転には何ら問題はない、連続80Hzでも問題ないと思われる。
逆転も可能である。

進相コンデンサーを付けたままで3相 出力の一部を使って単相駆動することも可能であった。 当然ながら、この場合インバーターから逆転することはできない。
インバーターはパルス幅制御をしているため、尖頭値電圧は300V近くになっていると思われる。コンデンサーの耐圧不足があり得るので注意が必要である。

コンデンサー起動、遠心スイッチを持つ単相モーターをインバーターで駆動する

直交する2組の一次巻線とかご型回転子で構成されるモーター。 前記コンデンサーモーターと同じ構成であるが、コンデンサー経由で90度移相した起動電源は起動後遠心スイッチによって遮断される。このコイルは起動コイルとしてのみ作用する。回転が上がった後には交番磁界によって回転子は駆動される。
起動コイルには比較的大きな電力を供給している模様であった。遠心スイッチを無効にしてコンデンサーを用いて単相で回したところ明らかに起動コイルには連続運転するには過大な電流が供給されている。
起動トルクを大きく取るためなのであろう。
前記のコンデンサーモーターのように3相 200Vを連続して掛けるのは無理である。

 画像2
そこで、モーターの進相コンデンサーは用いず、抵抗器で起動コイルに流れる電流を制限して3相交流を加えることにした。
この方法で400Wのモーターを安定して使うことができた。遠心スイッチは針金で縛って動作を止めている。画像2
小型のコレットチャック式旋盤の駆動モーターとして実用にしている。ベルトのかけかえなしで自由に回転数を変更できるのは非常に便利である。低速の場合F/V制御が効いてトルクが不足するのは致し方ない。
いずれ、外部にファンを設けて強制空冷をして低速でのトルクブーストを掛けたいと思っている。

分相起動 単相モーターをインバーターで駆動する

直交する2組の一次巻線とかご型回転子で構成されるモーター。 前記コンデンサーモーターと同じ構成であるが、起動コイルは巻数を少なくし、抵抗を介して電源を供給し移相して回転磁界を得る。起動後は起動コイルは遠心スイッチによって分離される。

この方式のモーターは手持ちがないのでまだ実験を行っていない。おそらく前記のモーターと同様に起動コイルに電流制限を掛ければ使用が可能だと想像している。

反発起動式単相モーターをインバーターで駆動する

固定子巻線は1組のみ。回転子巻線は直巻モーターと同様な巻線と整流子を持つ。整流刷子の取付け角度によって回転方向が決まる。起動後は遠心スイッチにより整流子は短絡される。

まだ実験を行っていないが、遠心スイッチが動作する以上の回転数で使う場合にはインバーターの利用が可能であろうと想像している。低速での使用は避けるべきと思われる。インバーターから逆回転はできない。

隈取りコイル式モーターをインバーターで駆動する

極小型のモーターに使われる方式。隈取りコイルと呼ばれる短絡線輪によって移相された磁極をもたらして回転磁界を作っている。 隈取り線輪の位置によって回転方向は決定されるので、逆転は不可能。
インバーターから単相出力を使って回転させることは可能であった。
低回転速度では隈取りコイルの作用が弱くなると思われたが、モーターは良く反応してくれる。

 

100Vモーターに適合させる
 画像1のモーターは定格100Vである。
インバーターを基底電圧100V 基底周波数をモーター定格(50または60Hz)とすればモーターの規格通りの電力供給ができる。
気をつけなければならないのは、100V定格のモーターは二乗平均値100V尖頭値141Vを念頭に設計されているはずである。
インバーターからのパルス幅変調された交流の尖頭値に耐えられない可能性もある。注意を要するところである。

3相 200V入力規格のインバータを100V電源で使う

3相 200V入力はインバーターの中で整流されて280Vの直流に変換されている。したがって直流280Vを供給すれば整流回路を通過して必要な電力を供給できるはずである。
画像1 の例ではAC100Vを倍電圧整流してDC280Vを得て、それを3相 200V入力のインバーター入力端子に供給している。 画像の左上に黒い絶縁テープに覆われた部分が倍電圧整流回路である。この例では手持ちの390μFの電解コンデンサー2個を用いて40Wの送風機を運転するには十分であった。

画像3

画像3は同様100V電源で3相 200Vのインバーターを動作させている。逆耐圧600V1AのブリッジダイオードのAC入力側をショートしてダイオードを並列に使っている。ダイオードのバランスについては無視。この例では680μF耐圧200Vの電解コンデンサーを使用している。このインバーターの最大出力200Wの負荷にも十分に動作した。

2個のダイオードと2個の電解コンデンサーを使うことはお判りであろう。ダイオードの逆耐圧に注意を要する。
インバーターは『欠相を検出しない』設定にしている。

いずれの場合もインバーターの規格外の使用になるので、実験を充分に行って充分に安定性を確認してから実用にすること。 時間が経過してから問題が出ることも考えられるので、無人状態での使用は考えないこと。

発熱は手で触れて判るが、絶縁破壊は予兆なく起きるので注意を要する。

 

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