昨日に続き、Recitの倒置吹子のヒステリシス軽減実験や改良案の煮詰めなどに時間を取られました。 今日はその他に Grand Orgue(第一鍵盤部)のBourdon 16')の予備整音を進めました。 このオルガン製作当時はまだ、ネオバロックオルガンが全盛であった時代です。 自分もその呪縛にあっていました。 今になってみると"なぜ?"と思うようなことも多々あります。 下の木管はBourdon 16'の大文字のCisの歌口です。 左は当時の歌口の高さ、罫書き線まで切り上げました。 当時は歌口を1/4(歌口の幅に対する歌口の高さ)以上に切るのはタブー視されていました。 歌口を不自然に低くしていたために自然な発音が阻害されていました。 このような処置によって柔和で柔軟性に富んだBourdonになってくれると期待しています。 |
歌口の適度な高さは、歌口の幅に対する比率で決まるものではありません。 音高、風圧、得ようとする音量・音色、パイプのメンズール(寸法、特に径)、パイプの形状などに影響を受けます。 絶対的な歌口の高さは音高が決まればかなり決まってきます。 したがって歌口の幅が狭いパイプでは比較的高めの歌口に見えます。 幅が広い歌口では当然 低めの歌口に見えます。 その結果が良い発音、良い音色につながれば成功なのですから1/4などという数値にこだわる必要はまるで無かったのです。 歌口の高さは、弦楽器に例えれば、駒から擦弦点・撥弦点までの距離 に相当します。 弦楽器奏者はあまり意識しませんが、経験で一番良い擦弦点・撥弦点を見つけているのです。 オルガンの場合にはそれをオルガン製作者が見つけておかなければならないわけです。 別の見方をすると、空気柱という共鳴器を空気流によって励振して空気振動を起こしているわけですが、励振点のインピーダンスの整合を取るのが歌口高さの決定でしょう。 物事はいろいろな見方、理解のしかた、解釈の方法、理論付けの方法があります。 観察を密にして解釈をつきつめておくといろいろな場面に遭遇しても速く次の解決法に到達できるように思います。 |