日付:8月04日 この内容は本日行った作業ではありません。

 オルガンの経年変化の一例です。
昨日Flute a cheminees 8'のパイプを口で吹いて、整音を点検していましたところ下の画像のようなパイプを見つけました。 歌口部分を上から見たところです。 パイプの足が立っているのは私のひざです。

 歌口の下唇部分と内部の水平な板(Kern)が作る風が吹き出る隙間が中央部で膨らみ、平行ではありません。 18年前の私の技量でもこれほどの不平行を放置するわけはありません。 長い期間にこのように金属が動いたものでしょう。

 このように風の道が広くなりますと、パイプの足穴とこの部分のプロポーションがくずれてしまい、一般的には風速が不足してパイプがよく鳴らなくなります。 足穴が十分に大きい場合にはパイプが鳴りすぎることになる場合もあります。 このパイプはきちんと鳴らなくなっていました。

 整音のくるいというのは、調律のくるいのように顕著には判りません。 しかし、人が作ったもの10年程度を目途に今回のような作業をすることが必要です。

 パイプを製作するときに、整音結果を的確に予想できるとこのようなくるいは発生しにくくなります。 整音作業で金属を動かさなくて済むと、それだけもどりも少ないものです。 しかし、特に大きなオルガンではそのようなことは困難です。
 現場で整音を頭から始めるよりも、工房である程度予備整音を行っておくと初期変動が現場に行く前に出て、現地での整音がより安定するように思います。
 現場で口切から始めるオルガン製作者もいますが、私は疑問に思います。 そのような場合には1年程度後に整音を見なおしたほうが良いように思います。

前のPageへ  次のPageへ

カタリナ学園大規模保守Mainへ  Homeへ