オルガン製作ほど多様な道具を必要とする職業はないでしょう。
その多くは市販の工具です。 市販の工具が具合が良くない場合、あるいは手に入らない場合には、自作するか市販のものを改造することになります。『注文しに行っている時間にできるようなものは、自分で作る』 ことです。
ここでは、そのような工具あるいは機械類を「工具のページ1」 「工具のページ2」 「工具のページ3」 「工具のページ4」 「工具のページ5」 「工具のページ6」 「工具のページ7」 「工具のページ8」に続いて、いくつか公開いたします。
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リード観察照明
リード管の整音は、リードのカーブを調整して発音や音色を求めて行く作業が大半を占める。 リードの曲がりの不均一や、曲がり具合の変化を観察するは容易ではない。 蛍光管に縞模様を付け、リードに写る縞模様を観察するとリードの曲がり具合を容易に観察できることを 草苅オルガン工房の草苅氏に教わった。
古い液晶TVを捨てる時に冷陰極蛍光管のバックライトを取っておいたことを思い出し、ケースに入れて縞模様を前面に貼り、現場作業でも不自由しないように固定用の自在ジョイントを作った。
十分に実用になるものができたと思われる。 電源は過去の携帯電話の充電器を再利用。
Febi. 2014 |
電熱式 焦がし工具 Mechanikführungbrennzeug 演奏メカニズムに摩擦は禁物、メカニズムのガイド穴も完璧なまでに摩擦を無くすようにする。 ヤニの成分で摩擦が大きくなることもある。(特に針葉樹材) そこで、ドリルで穴をあけた後 赤熱した金属棒で その穴を焦がすことをする。 穴の表面は焦げて炭化し摩擦はほとんど無くなる。 ドリルで折り曲げられただけの木の繊維は焼き切れ、ヤニも焦げになり悪さをしなくなる。 この方法はニューマティック機構では特に必要である。 今回はすでに完成している他工房製のポジティフ修理を依頼され、非常に手が入りにくい部分を焦がす必要が出てきた。 以前からアイデアとして持っていた電熱によって穴の内面を焦がす仕掛けを製作した。 ボタンを押すと2次側に大電流が流れて発熱棒が赤熱する。 発熱棒をメカニズムの穴に通しておけば、その穴の内面を焦がすことができる。 当初、発熱棒に鉄棒を使って試みたが(画像の段階では鉄棒を使用している) 高温になると容易に曲がってしまう。 トランスは全く温度上昇を感じなかった。 容量は十分であったようである。 Mai. 2013 |
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閉管半田付け蓋 成型工具 Pfeifendeckelform 金属閉管の蓋は整音後半田付けする。平らな板も使われるが、立体的に丸味を帯びた形の方が音圧をしっかりと受け止めてくれるので音質が良いようである。 従来はゴム台の上でハンマーで叩いて成形していたが、かなりの労力と時間を要する。 所要の作業時間は従来の 1/10 どころではない。 4枚重ねて一気に成型も可能。 下の画像は、その結果。 この後、パイプに合わせて丸く切り抜かなければならない。 小さいパイプにはこれでも曲率が不足するので、もっと曲率半径が小さい工具も作らなければならない。
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パイプ修理工具 Ausbeulzange für Metallpfeifen. 東関東大震災で被災したオルガンパイプの多くは パイプ足部分に凹みが生じていた。(参照:被災状況と考察) 本来はパイプ胴と足を切り離し、Kernを外して 型にはめてたたき直して形を整え、再びLabium(唇)を整形し、Kernを半田付けして、胴体と一体に半田付けするという作業をしなければならない。
パイプ足に凹みや変形が生じていても、Kern周辺に問題がないパイプは、凹みの下で足を切断して、凹みだけを修理して再度半田付けして元に戻すこととした。 凹みを内側から叩き出すのは容易ではない。 左の工具を思いつき製作。 嘴を延長して50mmほどの懐を作った。
左画像
外側に平らな嘴を当てて、内側に出ている凹みを押戻してやる、 位置を細かに変えて平均に押し出すときれいに修理が可能である。
塗料が凹みに溜まって乾いたので少々不明瞭であるが、平らになった。 従来の修理法よりも、格段に早く、またパイプを傷めずに修理を行える。 切断した部分は半田付けをするので、半田痕は残る。 内部管では全く問題はないことである。
Juli.2011 |
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パイプ用 小半田鏝 Kleine Lötkolben für Metallpfeifenbau. パイプの半田付けには特殊な半田鏝を使います。 大きな半田鏝は市販品を多少改造するだけで具合のよい物があります。
当初 1.4mmの銅板を3枚重ねて銀鑞付けをして厚さ5mmほどの鏝先にして使っていた。 それなりに便利であった。 Schrottkupfer wurde geschmolzen. Davon wurde Kolbenteil geformt.
鋳造と言っても型に流し込むのではなく、耐火煉瓦の上で銅の切れ端を溶かすだけのことである。 冷えた後、金床の上で鍛造して厚みの不均一をならし、鏝先の形に切り取って、研磨、ネジ穴をあけて鏝先とした。 少々改造した市販の半田鏝(60W)に鏝先を組み込んで完成。 鏝の柄をヒーター側に延長して細かい操作をしやすくしている。 軽量であることと相まって非常に使いやすい鏝となった。 半田はL字型の端面以外には流れてはいけない、側面、前後面は黒く腐食させなければならない。 Griff wurde mit dem Holz zum Heizkörper verlängert.
左は、実際に1/2'ほどのパイプを作っているところ。 銅の鏝先の熱容量が不足して温度変化が大きくなるかと危惧していたが、使ってみた結果、1/2'より小さなパイプでは全く問題を感じなかった。 あまりに良いのでさらに一台追加製作の予定。
Mai.2011. |
金属パイプの型 Pfeifen Formen, aus Holz mit Stahlkern. 金属パイプを作る時には多数の型を必要とする。 これは円錐形を作るための型。 錫鉛合金の板をこの型に巻きつけて叩いて成形する。 細い型は総鋼、太い型は芯に鋼材、太い部分は木製である。 総鋼で作ると非常に重たくなるのでこのようにした。 製法は、機械旋盤にて両センター削り Juni.2011 |
400x300 Pixcel als Norm.